さかまく冬 電線の風切り音 空気と光 関係ないよ/水町綜助
 


そのときから記憶は

記憶は断片的になる

町を流れる新しい運河

水面にそっくりそのまま映ったビルと僕たち

どちらが本当でもべつにかまわない

オレンジ色の日差し

胸が苦しくなるほど澄み渡った空気

暗いマンションのひと部屋まではとどかなかった

さまざまなことが起こり

さまざまな空間と段落と行間のあいだに割ってはいる

それはまったく突然勝手にそうなっているのかもしれないし

誰かがわざわざ作ってさしこんでいるのかもしれない

その誰かは

僕かもしれないし

自転車の脇微笑む黒猫の鳴き声

君かもしれないし

高い
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