さかまく冬 電線の風切り音 空気と光 関係ないよ/水町綜助
高い電信柱にとまるカラスのクチバシ
誰かほかの奴かもしれない
わからない
世界一の砂の話と同じこと
窓から強い光が射し込む
ゆらめいてるたばこの煙がそれに刺されて
複雑な模様が空気の上にはっきりと浮き彫りにされる
僕はそれを見ようと目でなぞるけれど
すぐに形を変えてしまう
そしてすぐにかき消される
僕の呼吸のせいで
だから僕は息を殺してそれを崩さないようにしようとするけど
それはやはり続かないこと
あきらめてただ見つめよう
そして瞬間を断片的に瞳に映しておこう
青空を見ている茶色の瞳に
そして感じるイメージはたぶんそんなに間違ってはいない
走る電車のなかで音楽を聴くようなもの
わすれない雨が降った夜の翌日の晴れ間
強すぎる冷たい風に乾かされるプラットフォームで
そう思った
視界の外には高すぎるビルと数本の電線
遠い風鳴り
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