最終行まで/岡部淳太郎
 
それを一瞬にして終らせてしまうことはただの
美しい抒情詩にしか過ぎないのか

いつだって
僕たちは濡れることが出来るだろう
生の水滴を
ぽたぽた、と、
路上に滴らせて


?

僕は
  (僕たちは)
憶えている
思い出すことができる

どんな雨がこの地を覆ったのか
どんな雨がこの身を洗ったのか

憶えているから
思い出すことができるから
僕は
  (僕たちは)
つぎの雨を待つことができる
つぎの雨を泣くことができる

無数の死者たちとひとりの子供が
遊びまわっている
その光景にも雨が降っているが
そんな古い絵でさえも
思い出すために
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