最終行まで/岡部淳太郎
 
が次にどんな一行を書くべきかを
忘れてしまう

(       )

いまだ書かれることのない
最終行に向かって
僕たちは思いを整えるのだが
雨はいつも無常
僕たちが歩いてきた 多くの言葉を
無言で洗い流してしまう

(       )


?

生が一瞬の抒情詩であるならば
人生は長い 長すぎる叙事詩

僕はまだこの詩を終らせたくない
最終行を 書き記したくない

それでもいまもなお 雨が
ずっとずっと高くから降りつもっている

乾くために濡れる その心音を聞き漏らして
僕たちはまたしても無情となる

人生が長い叙事詩であるならば
それ
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