子規の句 雲の峯、藻刈舟/A-29
 
  雲の峯(みね)水なき川を渡りけり  子規

 明治三十二年、子規三十二歳の夏の作。私の最愛の句。また子規には

  藻刈舟(もかりぶね)雨ふるかたへ帰りけり  子規

という句がある。これは明治二十六年夏の句。双方とも上五を季題の体言止とし、下五を「〜りけり」と結んでいる点で構造的に同形であり、韻律も酷似している。が、後者が「ビチャビチャ」な感じであるのに対し、前者は「カラカラ」な感じで対照的だ。二つとも私が愛してやまない句であるが、どちらか一つをとれと言われれば「カラカラ」の方をとるだろう。
 なにしろ音がいい。kumonomine mizunakikawawo w
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