畜生/松嶋慶子
 
に落ちて、草にまみれた子猫は、一目散にミツのもとへ走った
どこか誇らしげにも見えるその子猫の姿に、はっとする
ミツは、他の兄弟たちを乳にぶらさげたまま立ち上がって、その子の汚れた体を丁寧になめてやった
見上げると
祖父は優しく微笑んでいた

ある時、野犬が庭先に現れた
ミツは猛然と野犬に向かっていった
激しく威嚇する
子猫たちは庭の奥で身を寄せ震えていた
ミツは、野犬に飛びかかって噛み付いて、傷だらけになって追い払った
ふらふらと戻って来たミツは、ひとしきり体をなめると、まるで何事もなかったかのように子猫たちに乳をやった
乳をやり終わったあと、ミツは
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