畜生/松嶋慶子
見る祖父の膝の上にのぼり
丸くなって眠るのだった
祖父は
皺だらけの手のひらで、静かにミツをなでていた
祖父が死んで
その亡骸が家に戻って来た時
ミツは、祖父の傍から離れようとはしなかった
祖父の顔の横で、毛繕いをし、それから祖父の顔をぺろぺろとなめて
顔の横で丸くなって眠った
祖父の足の裏をながめながら私は
祖父の言葉を思い出していた
「猫は所詮、畜生なんやから」
あの頃は
それがどういう意味かもわからず、
ただただ心の中で繰り返すばかりだった
祖父の隣で眠るミツを眺めながら
何度も何度も繰り返していた
「猫は所詮、畜生なんやから」
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佳川侑生 /松嶋慶子
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