畜生/松嶋慶子
きたくもないことを、祖父はいう
「自分のおとしまえは自分でつける、それが畜生なんや」
まだ幼い私は
ミツが、祖父が憎かった
幼い子猫たちが庭で遊ぶ様を
ミツはいつも縁側で目を細めて見ていた
ある時、木に登って降りられなくなった子猫がいた
ミツはというと、ずっとみつめたままだった
何時間も降りられないのを、私がかわいそうに思って助けようとすると、祖父が
「よけいなことは、せんでいい」
という
他の子猫たちは、ミツの乳房に群がっている
子猫は、悲壮な声を上げて、母親を呼ぶ
それでも、ミツは動かない
ついに、木の上の子猫は、意を決して降りる、ずり落ちる
そして、茂みに落
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