長く、気が狂うような一日/逢坂桜
 

「帰ったんじゃなかったの?」
「早く終わったんで、戻ってきました」
他愛のない話を、笑いながら交わす。
     つい数時間前、命を懸けて包丁の奪い合いをした
     自分がまっぷたつになる
     私は死ぬはずだったのに

たまっていた仕事を片付け、手伝ったもらった仕事を確認。
14時半、母に電話。
「いま会社にいる。朝、会社に来たけど、あれから父さんのとこに行ったの」
「休んだの?」
「だから、いまは会社なの」
ひとつずつ終わらせて、訂正して、FAXして、COPYして。
     数時間前、包丁を手にした
     死ぬはずだった
笑いながら会話をする
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