長く、気が狂うような一日/逢坂桜
 

ボンネットに触れると冷たい。
帰ってきてから数時間は経過している。
本人はまだここにいる。

ポストに苗字が入っている。
階段を上がって、ドアの前に立つ。
チャイムを3回押すも、応答なし。
左手に小窓、鍵は開いている。
背中が見える。
窓を開けて「開けて!」という。
驚いて振り向く。
「開けてってば!」
立ち上がって、鍵を開ける。
中に入ると、抱きしめてくれる。
荷物を置いて、すわって向かい合う。
涙が出てくる。
あぁ、やはり、親なのだ。子供なのだ。

かばんを開けて、紙袋から包丁を取り出す。
取り合いになる。
負けるつもりはなかった。
相手は男とはいえ
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