長く、気が狂うような一日/逢坂桜
 
いえ病人で、年中、手が痺れているのだから。
だが。
私の死の決意よりも、父の私への執念が強いのか。
負けてしまった。
包丁は取り上げられた。

車に乗り、駅への道を走る。
40分くらいだったろうか。
涙は、数秒の間をおいて、流れている。
後から後から湧き出してくる。
涙を流しながら、父と会話を重ねる。

子供の命がけがこたえたのか。
それすら本当なのかどうか、私にはわからない。

駅から新幹線に乗る。
ひかりレールスターで1駅だけ。
JRから私鉄の駅へ移動。
発車前の車中から上司に電話。
「昼ごろには会社にもどれます」
「え?」
「仕事、たまってますから」
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