文学史的演説/ダーザイン
 
らの生を現に在らしめるわけだが、ある種の者たちはエンペドクレス宜しく存在論的分裂の超克という不可能な試み、不遜な挑戦へと投じられている。不可能事への挑戦である以上、必然的にルサンチマンという情態性の色彩を帯びることとなるこのゲームの消極的な規則が予めの敗北であれば、積極的な規則は言語を生きるということだ。これによってルサンチマンを超克せんとするのである。
 言語を紡ぐ(詩のようなものを紡ぐ)ということは、存在論的差異を生きるということと同義だ。エンペドクレスは失われた存在の全体性の回復を求めてエトナ火山の火口に飛び込んだ。パウル・ツェランは言語によって存在の灼熱の火口に飛び込んだ。存在に何らかの
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