文学史的演説/ダーザイン
天文学者達の観測結果によると、宇宙空間に存在する暗黒物質の量は予想されていた以上に多く、また、質量を持たないと思われていた素粒子ニュートリノが実は質量を持っていることが判明した。これが意味することは、宇宙は膨張を続けて熱死するのではなく、いずれは自重によって収縮を始め、馬鹿の一つ覚えのように膨張と収縮をえいえんに繰り返すということだ。一回限りの生を生きる一個の実存にとってはどちらに転ぼうと関わりの無いことではあるが、熱烈な実存主義既知外派であるワレンチンにとっては宇宙も一回限りで無ければ気がすまないわけで、旧ソ連邦の最先端科学技術をもってして宇宙を熱死せしめる事に生涯をかけたのであった。
ワレ
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