文学史的演説/ダーザイン
ワレンチンが気付いた造物主の意図とは、宇宙を熱死せしむるものは物理学を超えるある種の人間の状態、即ち「狂気」だということだ。造物主の計画に神の死が含まれ、人が何の足場も無くネット空間ワイヤードを漂う非常に不安定な存在者になったのは、造物主が我らの狂気を増進するためだとワレンチンは考えた。分裂して支離滅裂になり個人的に熱死するもよし、重篤な鬱になって生きながら真っ黒な虚無そのものとなり、周囲の物質を吸い込んで宇宙の外に放り出すもよし、ともかく宇宙を熱死させるためには人類の発狂を促進することが必要なのだ。斯様な訳でワレンチンが開発したのが「爆裂電波受信ギア」である(現在市販のTAやモデムには全て組み込
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