「いつも心に」/広川 孝治
 
いつまでも消えない風景が
瞼の裏に焼きついている

夏に木陰でウーロン茶を飲み干して
蝉の合唱に包まれながら瞳を閉じると現れる

こんなに垂直な建物ばかりの街ではなく
曲がりくねった木が生えている森のある村
そこに潜り込むように消えてゆく夕日
影絵のように森の木々がシルエットとなり
ヒグラシの歌が遠くから聞こえ
さわやかな風が僕を撫でてゆく
そのとき僕は
世界を抱きしめたい気持ちに駆られるのだ

目を開けると
クマゼミのかしましい音
車の奏でる不協和音
アスファルトから立ち上る熱気が
コンクリートの照り返しと共に
僕を熱中症へと駆り立ててゆく

今生きて
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