「いつも心に」/広川 孝治
 
きている街は
僕に金を与えてくれる
そしてあの
消えることの無い懐かしい風景は
ふとした拍子に
この無機質の街に同化しそうになる僕を
引き止めてくれているように
僕には感じられる

あの
ヒグラシと共に僕を撫でた風を
再び感じることのできる日が
やがて来るだろうか

その時に
同じように
僕は世界を抱きしめたいと思うだろうか

ウーロン茶の入っていたペットボトルを
ゴミで溢れている空き缶入れに押し込みながら
僕は額の汗を拭き
黒くなったハンカチを眺める
僕の心も同じように汚れていないことをぼんやりと願いながら
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