August 15th/広川 孝治
 
激しい太陽の自己主張に手をかざし眉をひそめる
すだく蝉の声が全身を包み込む
額ににじむ汗
高く上った太陽が頭頂部を加熱する

きっとあの日も
同じ太陽の光と
同じ蝉の声が
ラジオから流れるいかめしい音を
必死で聞き取ろうとしている人たちに
降り注いでいたのだろう

今自分は
夫婦でランチを楽しむために
街に出ている

意に反して異国に送り込まれることも無く
銃を持ち人の命を奪えと命じられることも無く

ただただ
給料の安さと家の前を走る暴走族の騒音への不満
蔦の絡んだ球場で汗を流す球児たちへの賛辞
近付く弟の婚礼のお祝いの相談
波立たぬ日常を繰り返し
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