August 15th/広川 孝治
 


テレビの特集番組とやらを眺め
平和を祈願する神妙な思いを味わい
少し自分が高級な人間になった錯覚におちいり
夜には冷えたビールを飲んで幸せな気分に浸り
「こんなことができるのは平和なおかげだ」
などと判ったような、でも実はまったく判ってない台詞を吐く

平和が当然の時代に生きる僕の上に照る太陽
戦争にすべてを奪われ、最後は放り出され、それでも生きてゆかねばならなかった人たちを照らした太陽

時代が変わっても
変わらぬ日差しが
僕を責める
音も無く
じりじりと
僕を責める

それに答えるすべを僕は
まだ
持たない

帰りに靴を買って良いかと尋ねる妻に
渋い顔をして見せながら街を歩く
日差しと共に心に降り注ぐ
声なき声に焼かれながら

今、僕は平和という貴重な水を
浴びるように飲んでいる

その貴重さに気付かずに
浴びるように飲んでいる
きっとこれからも飲み続けるだろう

平和へのひりつく渇きを覚えていた幾億という人の
そして今でも渇いている幾億もの人々の
声なき声に焼かれながら・・

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