毒のおはなし/山本 聖
とつため息を吐くと、丘の天辺へと登りきり、其処にしゃがみこむ。
そして、今日一日使われることの無かった乾いた手指を、闇に浮かんだ地面につ、と差し込んだ。
土は意外に柔らかい。少しだけ湿った土くれを人差し指でえぐりだすと、あの匂いがした。指に付いた黒い塊に鼻を寄せると、あの匂いは強まる。子供は、無言で、確信する。
ここは、掘ってはならぬ聖域なのだ。ここの土は、毒にまみれている。確か、ひとの背丈以上に掘ってはならないと大人たちが口々に言っていた。せんそうちゅうに、せいぶつへいきのじっけんをしていたくいきだから。いまだにここにはたんそきんというどくがうまっているのだそうだから。
無心に、
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