出来損ないの七十行/岡部淳太郎
すべてを知っているわけではないが
すべてを知る権利を持つわけでもないのだが
君に近づくための足だけは持っているのだ
それを使用するかどうかはまた別の問題だが
そのうち時は鍋のように煮立つかもしれぬ
やけに水くさいと思ったら
俺の観念が脇腹からぽたぽたと
ぶつぶつつぶやきながら滴り落ちていた
だからこれは君のせいではなく
すべて俺の責任に帰せられるものだろう
飛んでいけ 空中都市
俺の言うことを信じすぎてはいけない
俺などどうせただのぶざまな
増殖する詩行の肉塊に過ぎないのだ
またしてもこんなふうに
大事な詩行を無駄遣いしてしまった
時間と同じで詩の一行は貴重なのだが
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