出来損ないの七十行/岡部淳太郎
 
だが
俺は時々それを忘れて感情を奔出させてしまう
だがせめてこの倒壊した建築だらけの都市が
君の心臓の中に無事に着水してくれればと思う
たくさんの言葉を殺め
また置き去りにしてきたその報いとして
俺はこのような咎を負うはめになった
世界は美しいと感嘆する前に
やらなければならないことがあるから
ソネットを五倍に増殖させて
つぎのぶざまな朝を待つのだ
ああ 君に会いたい
君は俺を恐れるかもしれないが
俺は悪魔でもなければ天使でもなく
ただの出来損ないの
よくある古くさい失敗のひとつに過ぎないのだ



(二〇〇六年六月)
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