地獄雪の女王/TAMON 10
 

ゆっくり
ゆっくり
甲板の上にいる人々に
降り積もり
突き刺さり
ああでもない
こうでもない

やがてみな
こっけいなぐらい
見失い

やがてほとんど
その臭覚と
その聴覚と
その触覚だけで
人と行きかい
消し忘れ
右往左往し
それでもそこに
怒号も
悲鳴もなく
かえって
本当の地獄なぞ
えてしてこういうものだろうと
みな突如
なんだか想像を超えずに現れた
目の前の地獄絵図に
かえって安心感を覚えてしまった

そんな様子だったから
雪の女王は
そう
地獄雪の女王は
名詞を忘れ
挨拶を忘れ
かえって格好悪くって
いてもたって
[次のページ]
戻る   Point(1)