地獄雪の女王/TAMON 10
ってもいられなくって
開き直って
鼻歌を
歌ったところ
甲板の上の少女がこちらを見て
たいそう悲しそうに
何か言ってるが
もうそれは意味もわからず
おそらく一言二言
口をぱくぱくさせていたけれど
女王はもう歌うしかなくて
その少女を見つめ
その少女の足元を見つめ
そこには深紅の
少女の未来が
清流のごとく流れ出し
ああ
女王の
聞きなれぬ異国の言葉で
次から次へと
歌われるその歌は
鼻歌の割には
心に染みて
周りの海を行きかう
大きな船
小さな船は
女王のそばに
引き寄せられ
やがて海の藻屑に
ただ
藻屑になった船の中
ゆらゆら揺れるそのむくろたち
みな平安な笑顔で
まるで天国を見た子供のように
たいそう安らかだったという
まあ
天国も地獄も
案外コンビニで
売っているものかも
知れない
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