オールトの歌/蒸発王
 
のですが
耳栓を通して聴いた
彗星の高周波は
耳鳴りではありませんでした


細く透き通った
蜻蛉の羽のようなしめやかさを持つ

女性の歌声に聞こえたのです


     深く
     今 風になって
     遥かという貴方の元へ
     永遠の腕へ
     渡っていける


ママの歌声でした


鈴のような
大空を羽ばたくような
大きな翼の共鳴を持って
まさに風になって
懐かしい歌声が
耳に届いたのです
彗星の
ママの歌はどんどん共鳴し
大きくなっていきます
窓の外を見ると
其の彗星は目の前に迫っていました

青白い光を
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