ビタミンヘラクレスナナメヨコ/カンチェルスキス
め」と愛らしくやさしく囁きあい、この国にサルサを定着させたんだった‥‥‥‥。愛用のミシンは祖母に預けてある。水は雨が降ったから飲めたし、腹が減ったらタイムカードを押して、「お疲れシた!」と言えばいい。二重跳びの練習中のトムに途中で遭遇し、「ハイ!リチャード!」と声をかけられたとしても、「やあ、トム」と返事すれば済むことだ。何も不快になることはない。
駅に辿り着けないことだけが唯一気がかりだったが、だましだまし進んでいけば何とかなるだろう。おれの体には自動CDチェンジャー機能がついていて、いつだってお気に入りのCDを選び取ることができた。ただ、まあ、肝心のスピーカーがなかったんだ。音は聞こえない
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