ビタミンヘラクレスナナメヨコ/カンチェルスキス
ない。おれはウーハーを希望してた。重低音ウーハーだと重いからな。軽いウーハーなんてあるのかわからない。何しろ古い人間だから、おれは。どれぐらい古いかと言うと、男性週刊誌の巻頭グラビアになるぐらい古いんだ。クソ重いウーハーを持って歩くわけ
にもいかねえから。ウーハーは重いよ。スピーカーは結局ナシの方向で何とかやってる。音楽は聴けずじまい。そんで、口笛や鼻笛でもってお気に入りの楽曲群を演奏するわけだけど、ここは砂漠だからラクダが寄ってきて、おれの頬に頬ずりしたり、枯れ木だと思って舐めてきたりする。汚ねえよ、バーロー、ラクダどもっておれは思って、怒り心頭だったけど、よく見ればももひきの爺さんも混じってて、裸電球みたいに爺さんの禿げ頭もピカッと光って、まあ、これも老人介護の一つだと思って、おれ、開き直り、唾液まみれ。サボテンが横になって眠ってた。こんな光景めったに見られるもんじゃない。
それにしても、だ。
ベルトしてこればよかったんだ。これじゃあ駅に辿り着くまでにケツが丸見えになっちまう。
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