深呼吸して眠ればいいよ。/夕凪ここあ
なたの名前を心で呼びました。
が、痛いくらいの静寂が返ってくるばかりで
肝心のあなたの姿は見えません、あぁ、もう夜だったのですね。
息が詰まりそうで窓を開けると
真っ直ぐにどこまでも迷いなどないほどに
透明な夜が広がっていました。
腕を、夜に伸ばすと
溶け込むことなどなく あの淡い光に包まれます。
腕の、傷跡が もう痛むことはありませんが
温かさに胸が締め付けられました。
もう、見たくもないものが見えてしまうくらい私は
大人になってしまったのですね、
窓の外で月が透明な輪郭を宿して私を見ています。
{引用=ねぇ、あなた、私あの月の裏側を見てみた
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