近代詩再読 立原道造/岡部淳太郎
 
じ取った自然の美しさと同じように美しい。
 だが、残念なことに(と言うべきだろうか)、この詩はここから先、せっかく獲得したはずの目醒めの瞬間を手放して暗い諦念の方へと傾いてしまう。「? 墓地の方」から最後の「? 旅のおはり」までの流れは詩人が「夏」の盛んな勢力の凋落を知る過程であり、そこにはもう美しい詩はない。「旅人は 空を仰いで のこして来た者に尽きない恨みを思つてゐる/限りない悲しい嘘を感じてゐる」(「? 旅のおはり」)のだ。せっかく第?章で至高の詩的高みにまで達していたのに、終盤がこれでは詩の構成として失敗ではないだろうか。もし立原道造がもっと長く生きていたなら、この詩的高みを充分に抒情の
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