殺人現場にミッキーがいた/カンチェルスキス
る目になるのか、考えるだけでも茶柱が立つ。試しに、我々はマスクマンを生業としてる成田健吉氏(マイナス56歳)にそこらへんのことを訊ねてみた。
「ナリタさん、あんた18の頃からマスクマンとして生計を立ててるらしいが、顔がなかったら今頃自分は何してたと思う?」
彼のマスクはALLエナメル白だ。蛍光灯の下に立つと、輝きすぎて見る側にはサングラスが必要になる。どぎつい白と言っては何やら気品めいたものが損なわれてしまうが、まさにそんな感じだ。
彼は涙ぐんでいた。我々は彼が特別涙もろいという挿話は聞いてない。マスクのちょうど目のところの穴から煙が出ていた。彼はマルボロの赤を吸っていた。マスクの内側に
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