殺人現場にミッキーがいた/カンチェルスキス
 
側に煙がこもり、それが目の穴から出ていったのだ。彼はいつもこうだ。目の穴から煙を出し、涙ぐむ。理由を訊けば、「シッ!」こう言われるに違いないから、我々はいまだにこの行動の意味をつかむことができなかった。冬のワンコイン駐車場にいるせいか、彼の下唇は乾燥しすぎて血が出ていた。我々だってそうだった。
 彼の答えは短かった。
「考えたこともねえよ」
 彼は愛犬の双子のプードル犬『右側と左側』の小さな糞を手づかみでスーパーの袋に入れると、『右側と左側』もスーパーの袋の中に放り込んだ。マルボロの赤を自動販売機の硬貨投入口に火をこちら側にして挟むと、袋をぶらぶらさせ、にこにこしながら去っていった。袋から顔
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