地蔵前/みつべえ
 
平線の彼方までつづく雪の平原だった。二月の初めに接岸した流氷の上に降雪が何度も積もった結果だった。この時季に絵葉書で見るような流氷の姿を期待する方がどうかしている。
 二人は同時に溜め息をついた。そして憑かれたように前方に広がる白い荒野に見入った。
どのくらいそうしていただろう。ふいにユカリが言った。
「ごめんね、ノン」
「えっ、なにが?」
「こんなところまで付き合わせてさ」
「いいのよ。こんな風景は東京では一生お目にかかれないわ」
  ユカリは小さくかぶりを振った。
「ちがうの。そうじゃなくて、あのさ、あたしの傷心旅行についてきてくれて、ありがとう、って言いたいの」
 ノンは
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