地蔵前/みつべえ
 
た。ついでに露天風呂に入るつもりなんだろうが・・・。地蔵はやれやれというふうに肩をそびやかした。

 密生した枯れ笹の間の狭い雪道を行くと、海岸を見下ろせる高台に出た。そこに観光客のために町民が設営したヤグラが組んであった。
「ガイドブックのとおりだわ」
 ユカリは板の螺旋階段をかけ上がった。海から吹きつける風と、ここ二、三日つづいた快晴のおかげでヤグラの上には雪も氷もなかった。
「待ってよお」 ノンが後から息を切らして追って来た。
 二人は一番てっぺんまで上がると目の前の光景に息をのんで佇んだ。海には無数の流氷がせめぎあって浮かんでいるはずであった。しかし、二人の目に映ったのは水平線
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