地蔵前/みつべえ
 
の彫り物が笑うはずがないと頭から決めつけている。
 バスが来て道をはさんだ地蔵の対面に停った。ということは午前八時。
「じゃあね」
 トモコが飛び乗るとバスは何度もエンジンをふかしながら発進した。もの言わぬ運転士が地蔵に手をあげて挨拶した。地蔵もうっかり手をあげて挨拶を返した。
 バスが行ってしまうと辺りは急に静かになった。一面の雪に朝の日差しが反射しているばかり。今日は昨日より暖かいなと地蔵は思った。とくに首のまわりが。
 それもそのはず、地蔵はまだトモコの襟巻きをしていた。オレンジとイエローの縞模様の襟巻き・・・

一時間後、バスは終点からユーターンして地蔵前に戻ってきた。流氷
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