地蔵前/みつべえ
だけだった。他の場所ではおとなしくて目立たない娘なのに、毎日よくもまあ口からデマカセを言えるものだ。しかし地蔵はトモコのホラ話を聞くのが好きだった。それにときどきトモコは本当のことも言う。なにしろ手づくりのチョコレートだからね。微笑ましいな。地蔵はうっかり頬の筋肉をゆるめてしまった。
「あーっ、いま笑ったなー、こいつー」
トモコは拳で地蔵の頭を小突いた。
「痛てて、やっぱし石頭だあ」
そこで溜め息をひとつ。
「バカみたいだな、あたしって・・・」
ひとり芝居からさめたトモコはプレゼントの包みを胸のところで強く抱いた。
地蔵はちょっと首をかしげた。
人間って不思議だな。石の彫
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