地蔵前/みつべえ
で乗り降りする客は皆無だった。人通りも殆どなかった。黄緑色の営林署のジープが一台、国有林へ向かって行ったのと、近所の隠居じいさんが愛用のスノーモービルを危なっかしく運転して街の方角へ走り去っただけだった。
光と風のなかを時間が静かに過ぎていくのが見える。地蔵の内にはすでに百年以上の時間の経過が蓄積されていた。千年かけてゆっくりと風化していくつもりだったが・・・
地蔵は目を閉じて少し眠った。久しぶりの睡眠だった。
目覚めると夕方だった。以前に深く眠り込んで起きたときには十年が過ぎていたことがある。目をしばたかせて周囲を窺った。現在は眠る前の一日の続きだろうか?
バスが停ってトモコを
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