地蔵前/みつべえ
 
プして危うく横転しそうになりながら停った。
 扉を開けさせると、ユカリはバスから飛び降り地蔵まで全力疾走した。こんなに力一杯走るのは小学校の運動会以来だなと頭のどこかで考えている自分が何だか可笑しかった。地蔵の頭から布切れ をひったくるように取ると、また全力疾走でかけ戻った。
 バスはユカリを回収して再発進。運転士が身体をのけぞらせて声もなく笑っている。
「悪質なイタズラね」
 ノンが笑を堪えて言った。さっきまでの恐怖心と怒りは嘘のように消えていた。ユカリも力のかぎり走ったせいかストレスが軽減していた。憤懣と羞恥は捨てようもなかったが、時間が経つにつれて笑いが込み上げてくるのをどうすること
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