地蔵前/みつべえ
い。大人でも楽に十人は一度に入れるだろう。
二人は顔を見合わせた。それから四方を注意深く見渡した。誰もいない。誰も来そうにない。
「入っちゃおうか」
「うん」
二人は脱いだものを小枝に掛け威勢よく湯に飛び込んだ。最初はちょっと熱くて肌が痺れるような感じ。それにじき慣れると愉悦が二人の全身を巡った。
「いい湯だね」ノンが言った。
「月並みなお言葉。でもその通りよ」 ユカリが笑って応えた。
「だいぶ元気になったようね」
「うん。ありがとう、ノンのおかげよ。それからこの町のおかげ・・・」
「そうね。最初この町に行くって聞いたときはびっくりしたけど。だってこんな最果ての地なんですもの
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