「優しさ」についての論考/広川 孝治
る。言い換えるなら、正誤、というものがある、と考えていた。
ところが、時が過ぎて、レヴィ・ストロースという人類学者は、それを否定した。歴史に法則があるのではなく、多様な可能性のうちから、たまたま現代へと流れて来たに過ぎない。時の試練に耐えたものが正であるということではなく、それらはたまたま耐えたに過ぎず、可能性としては、他のものと同じように時に流され消える可能性もあった。
浩瀚なフィールドワークにより世界の民族を観察して。彼は、「進歩した民族」と「遅れている民族」というものが存在しているのではなく、どれも豊かで優れた文化を有しており、優劣はつけられないという結論に至ったのだ。
サルト
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