私/db
 
、薬の副作用で全身の毛が抜け、挙句一挙一動にさえ重くなった身体を嘆く父をそっと、力強く、ずっと。夫婦というものがこれほど凄いものなんだと、私は単純に思うばかりでした。

 兄は冷静でした。病状や経過をよく観察しながら、父にとって最も良いことを模索します。無理をさせてはいけないと思えば釘を刺し、気分転換が必要だと思えば外へ連れ出したりします。最近では桜を見に県外まで遠出したほどです。あきらめない。けれどそんな時がきてもおかしくはない。そう私に言った兄は冷酷ではありません。努めて冷静なだけです。本当は誰よりも苦労性で感情的な人です。

 私は、何もしていません。実家にも顔を出しました。何ヶ月か
[次のページ]
戻る   Point(0)