『僕がギターを抱いていた理由』/川村 透
流しても、涙を見せる程の
出来事じゃない。
ステージを後にすると、ただ、山積みのハードボイルドが待ちかまえている
だけ。
裸の彼女を見た、<僕>がいる
裸の彼女と居た、<僕>がいる
<僕>は、彼女を抱いていた。
濁った目の、天使
閉じた目は、真摯
乳房に、<僕>がまさぐられているんだ。
火炎を、<君>が焼き尽くしているんだ。
濁った目のまま、<うた>の両肩に導かれ、でも、おぼつかなくて
蒼い肩から白い腕を覗かせる。
ギターに、<君>も抱きしめら
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