『僕がギターを抱いていた理由』/川村 透
 
められたままなんだ。
 <僕>は、彼女を抱いていた。
 <僕>は、彼女ごとギターを抱きしめていた。


 --------春の空気はフルートさえも湿らせるのか
 --------陽炎のように立ちすくむ無言の楽団


 君は、ギターごと僕を抱きしめていた。
 見えない、けれど、答える、コエは
 ふるえても、
 生まれたての仔馬が立ち上がるように、もう君の目は乾き始めている
 汗は流しても、涙を見せる程の
 出来事じゃない。


 <ステージ>を、後にするとただ、
 山積みのハードボイルドが待ちかまえているんだね。

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