「なんと違うことだろう」/広川 孝治
 
予定をいつもの声で
打ち合わせてる父がいる

なんと違うことだろう

愛する友が自ら命を締めくくった
26年の生涯を伸ばせば足が届く高さで
膝を曲げ無理やりに
息を止める死を選んだ
とめどなくあふれる涙

葬儀は怒号と哀糾に満ち
遺体に取りすがる母の手を
振りほどいて送り出す
火葬場に集まるあきらめきれない人々
誰一人、出されたものに手をつけず
真っ赤に染まった目を虚空に泳がせている
とめどなくあふれる涙

やがて焼き場の火が止まり
案内されるままに部屋に入る
そこに横たわっていたのは
彼ではない、別のもの
その姿を見た彼の父は
そのとき初めて声を上
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