「なんと違うことだろう」/広川 孝治
を上げ
とどまらぬ涙を見せた
その姿を見た彼の母は
天を仰ぐように気を失い
床にくたくたとくずおれた
彼の父の声を合図のように
再び怒号と哀糾が満ちて
誰一人骨を拾おうとしなかった
とどまらぬ、あふれる涙
なんと違うことだろう
同じ命と言うけれど
なんと違うことだろう
安堵と解放、そして追憶を伴う祖母の死と
心引き裂く悲しみと燃えたぎる憤り
そして己の不甲斐なさを責める自らの声
この生涯消えることない気持ちを心に刻み込む
深い命の烙印を押す彼の死と
なんと違うことだろう
ただ僕は、違いを思い、今も生きてる。
死に向かって、一歩一歩。
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