去年の春のこと/はな 
 
きないまま
ただふってくるはなびらのおびただしいのに
目を閉じる

ただもう少し
日が 長ければ と
背中あわせではかった あの日のかざむき


教室にさしこむ朝
おしまいまで散ること
明くる日 また目を覚ますことのように
もう少しかんたんに
あたしや あなたの屑を
灰にしてゆけたら 

あなたが きょうの朝に
わらわなくても 
すむように





「魚群」


いつかのわたしたちは
口笛のきこえる校庭に
むらさきいろのゆびをすてた
遠く雲はかすみ
それがやがて 何になるのかなど

桜はふらず
そういうものを望んで見上げた 

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