観覧車が燃えてるように見えたのは夕陽のせいだった。/カンチェルスキス
んて映画がなかったらええのに、タイタニックなんて沈まなきゃよかったのに、とおれは半ば自爆自棄になりかけた頃、おれは気づいた。はっきりとほとんど厳格的に悟ったのだった。今のところ、あの構図をものにしなくてもおれは暮らしていける、ということだった。暮らせるってことがどれほど素晴らしいことか、わかるやつのほとんどが戦争経験者だ。おれは戦争を経験してはいないが、六十九歳だ。それ
ぐらい生きれば何が人生で重要かわかってくるもんだろ。おれはそう思う。急に視界が晴れてきた。重さのない重さが体に覆いかぶさってたようだが、それも取り払われた。吐息がこれほど純白に見えたのは初めてのことだ。体の中から澱が消えた。構図
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