金魚と水草/長谷伸太
、水草はもう情けなくなってしまってブルブル震えて泡を出しました。
「ええいくそ、俺だって、見ていろ」
水草はそう言うと、力いっぱい踏ん張って、ぐんぐん伸びていきました。
水槽から頭を出したかと思うと、勢いづいてさらに窓の外まで伸びていきました。
「わあ、すごいや」
と金魚が言いました。
水草ははじめて外に顔を出して、すずしい風に吹かれました。「そよそよ」と口に出して言ってみました。
「おういこれは素晴らしいよ金魚くん。俺は今、木になったよ」
と水草は呼びかけました。でも水草は長く伸びて、頭が窓の外にあるものですから金魚にその声は聞こえませんでした。楽しそうな水草の姿ばかりが見えま
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