電話してくれりゃよかったのにさぁ/カンチェルスキス
ん」
おれは頷いた。
「じゃあさ、死ぬんだよね」
おれは頷いた。
「生きてるから、死ぬってことだよね」
男は二度繰り返した。どうも眼科の人間じゃないみたいだ。どっちかって言うと、TOTOのショールームにいる男のように思えた。おれはTOTOのショールームになんか行ったことなんてないけど。鮮やかなブルーのジャケットにパリッとしたホワイトのシャツだった。白のスラックスに白の紳士靴。
おれはまた頷いた。もっともだ、と思ったからだ。
「じゃあさ、こんなのはどうだろう。人間死ぬと何が必要かな?答えてごらん」
「口笛」
おれは即答した。
「夜、口笛吹くと、蛇が出るって言われたから、
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