観察者(1)/篠有里
 
視界の端、ちらりとすぎるその奥、見えないはずの物が見える。鬼目の私、不可視の自分。歌声。たくさんのにんげんのうたごえ。今日も心のスクランブル交差点の中央、立ち止まると、横断歩道の白と黒を心の中でより分ける。曇り空の下で。一本、二本、三本、紛れて交差して四本五本。もしかしたらそれ以上。向こう側にも同じ物があり、組み合わさって捻れて、ああ、通り過ぎる。耳に掴みかかる誘惑。みんな苦しんでいる。さわさわと耳を打つ歌声。

ふと、観察者が戻ってくる。私にどれだけ絵が描けたかを訊いてくる。彼には目がない。心がそれを捉えないように努めると見えてくるそれ、視界の左斜め過ぎ、ほとんど目の際の終わりの部分でそれを
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