夢を語る行為/篠有里
れからそんな事すべて忘れて、
いつものように得体の知れない重い気持ちと共に1日を過ごすのだから。
今こうやって、彼女が夢を語る。
「周りにあるはずの親戚の家も、親戚もみんないなくなってる」
動作と共に夢は失われるなら、彼女が夢を語る行為はまさに矛盾している。
「私は一生懸命家族を捜すんだけどどうしても見つからない」
そう、今はそれの何が恐ろしいのか、さっぱり理解できない。
聞いている方もそうだろう。
語る方もそうなのだから。
「何で実家が怖いかと言えばね」
自分を護るように丸くなる。
「実家に帰るとそこから出られなくなるようで怖いわけ」
「いったん帰ったら外に出してもらえな
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