雷造じいさんへの手紙/服部 剛
両手で開いた本を読んでくれていた姿を思い出し
なんだかわけのわからぬものが
胸の泉からあふれ出し
僕はベッドで布団をかぶり
朝っぱらからおいおい泣いた
雷造さん、
あの日一声かけただけで
おいおい泣いた寂しい気持が
今朝は何故かわかる気がするよ
思えば誰もが
青空を突き破らんばかりの
泣声を叫びながら
この世に生まれて来るんだね
誰だって
独りになんか
なりたくないんだね
時にどうしようもなく弱虫で
時に言葉にならないほど人恋しくて
風に吹かれてふらふらと
どこまでも続く人生という夢の旅路を
出逢う人
[次のページ]
戻る 編 削 Point(13)