雷造じいさんへの手紙/服部 剛
 

両手で開いた本を読んでくれていた姿を思い出し 
なんだかわけのわからぬものが 
胸の泉からあふれ出し 
僕はベッドで布団をかぶり 
朝っぱらからおいおい泣いた 

雷造さん、 
あの日一声かけただけで 
おいおい泣いた寂しい気持が 
今朝は何故かわかる気がするよ 

思えば誰もが 
青空を突き破らんばかりの 
泣声を叫びながら 
この世に生まれて来るんだね 

誰だって
独りになんか 
なりたくないんだね 

時にどうしようもなく弱虫で 
時に言葉にならないほど人恋しくて 
風に吹かれてふらふらと 
どこまでも続く人生という夢の旅路を 
出逢う人
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